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活動日誌Monthly News

手を動かして「手に取りたくなるデザイン」を考えた広野小×城西高校神山校レトルトカレープロジェクトVol.3

 2024年6月から広野小学校5・6年生と協働で、レトルトの給食カレーを自分たちの手でつくるプロジェクトをスタートしました。まちの食農教育は、プロジェクトの企画・調整役を担っています。

 前回は、栄養教諭の植田先生から給食のカレーの作り方を教わり、同じレシピで試作してみました。第3回目である9月27日(金)は、売れ行きを左右する重要な要素「パッケージデザイン」について考えました。

  

このカレーを買うのは誰? 誰に向けてデザインするか考えよう

 今回の授業に向けて、5・6年生にはカレーのパッケージに使うイラストとキャッチコピーを夏休みの宿題として考えてきてもらいました。事前にクラスで投票を行い、使用するイラスト、キャッチコピーの候補も決めた上でこの日を迎えました。

 選ばれたのは3つのイラスト。①笑顔でカレーを食べている男の子、②ネコと一緒にカレーを調理している様子、③そしてカレーをすくっているスプーンのイラスト。「レトルトカレーのパッケージ用のイラストを描いてね」のお題に、いろんな角度から給食カレーのおいしさを表現するイラストが返ってきました。

 「どうしてこのイラストを選んだの?」と聞くと、「①はカラフルでインパクトがあるから」「②は大人たちが給食を思い出して買ってくれそうだから」「③はキャッチコピーをレイアウトしやすそうだったから」と子どもたち。

 イラストに添えるキャッチコピーには「ほっとする なつかしの あの味」「学校のあの味がよみがえる…」「なつかしのとろとろ食感」の3つが候補に残りました。給食カレーを現役で食べる彼らが「なつかしい」という言葉を使うのは、保護者をはじめとする大人が買う姿がイメージされているのでしょう。キャッチコピーを際立たせるために、商品名は「神山の給食カレー」というシンプルな名前が採用されました。

 パッケージのデザインに取りかかる前に、城西高校神山校でフードデザインの授業を担当している藤崎美香先生から、パッケージデザインの基本について学びます。まずは実物のレトルトカレーのパッケージをみながら、この商品のターゲットを予想します。

「この商品は誰に向けて作られたかな?」と聞くと、みんな「子ども!」と即答。

 例えば、子ども向けの甘口カレーの場合は、明るい色やイラストが採用されており、フォントも可愛らしく丸みを帯びた書体が使われています。また、野菜のイラストなどが使われ、育ち盛りの子どもに思わず買いたくなる保護者の気持ちに寄り添うデザインです。一方、大人向けの高級感のあるカレーは黒地に金色の文字で「濃厚」という文字が一番目立つようにレイアウトされ、クオリティの高い味を求める大人のニーズに応えるデザインとなっています。

伝えたいことによって、色やフォントが全く異なることがわかった。

 藤崎先生は、デザインでは「フォント・カラー・レイアウト」が大切だと強調します。同じイラスト、キャッチコピーを使用しても、フォントやレイアウト、色使いで印象が全く異なるからです。

例として、同じイラストとコピーが使われた、異なるデザインを見比べる。

 デザインの要素として、ゴシック体と明朝体の違いや、暖色や寒色などの色が与えるイメージの違いについても学びました。

   

作ってバラして、また作って考える。レイアウトを実践!

  ここから、3人1組になってレイアウトを考えていきます! 「作り方も決め方も、みんなに任せるよ」と伝えたところ、「文字は真ん中と端、どっちがいいかなぁ?」など話し合いながらみんなで決めるチームもあれば、一人ひとつのデザインを集中して作るチームもありました。

5年生と6年生が一緒になってチームを組む

 情報をたっぷり入れたい子と、余白を多く取ってイラストや文字を際立たせたい子、職人のように文字をミリ単位で動かす子など、進め方にも個性が出ます。

イラストと、タイトル、キャッチコピーを教材として準備。福笑いのように動かしながら、ピンと来るレイアウトを探る。

 ある程度形になってきた頃、どのチームも、最後の一つを決める段階で悩んでいる様子。2案で決めあぐねているチームに樋口より「じゃあ、どっちか一つをより良くするためにはどうしたらいいかな?」と声をかけたところ子どもたちの創作欲に火がついた様子。「あ!こうしたらいいんじゃない?」と文字の位置を動かした子どもの目が輝きます。

 夢中でレイアウトする姿につられ、「面白いやん!」と、他のチームの子どもたちも集まってきました。

盛り上がるチームにみんなが集まってくる。

 3チームそれぞれ代表の1案を提出して、ワークは終了。1チームずつ、自分たちのデザインをプレゼンしました。左から「文字は読みやすくシンプルに。色の統一感を大切にしました」「キャッチコピーを階段のように配置して、目をひくデザインにしました」「“神山の給食”と“神の給食”が縦と横で交わるようにしてダブルミーニングを狙いました」など、どのチームも工夫が凝らされたデザインが提案されました。 

 どのチームも甲乙付け難い! でも、これはデザインコンペではなく、広野小学校の代表、つまり“みんな”のデザインを決める時間。どのデザインを採用するのかは、学校のみんなで決めた方がいいのでは?ということで、全校生徒と先生で投票をすることになりました。投票結果は次回のレポートでお知らせします! 次回は、カレー作りの本番です。いよいよプロジェクトも折り返しになりました!

髙木晴香(文・写真)

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この記事を書いた人:まちの食農教育 編集部

体験を通して身近な自然や社会を学ぶ、まちぐるみの食農プログラムの様子をお届けします。イベントのレポートやお知らせなども発信中!