ページの先頭へ

活動日誌Monthly News

神領小学校1年生の野菜づくり_01「おいしいやさいをそだてよう」

こんにちは、樋口です。
神山町内の小学校における食農教育の取り組みを紹介します。
町内の小学校では、4月〜5月にかけて先生方と打ち合わせを行い、年間の活動計画を立てています。
2023年度も多様な取り組みが展開しましたが、今回は神領小学校1年生の取り組み(4回シリーズ)の第1回目をレポートします!

農と食をつなぐ活動

神領小学校1年生では、担任の武市由美先生と相談し、生活科の学習で秋冬野菜を育てることになりました。武市先生とはこれまで1年生の生活科の授業で数々のプロジェクトをご一緒してきました(下図参照)。「育てる、つくる、食べる、つなぐ」を合言葉に、地域のレストランやお店、給食センターなど、子どもたちの身近な人に関わりが生まれる取り組みになっているのが特徴です。

太字:プログラムの連携先

子どもたちが生き生きと活動するイメージが持てたり、先生と一緒に「ワクワクする〜」と言い合えるのは、何より楽しいことです。活動は主に生活科の時間を使って展開されていますが、「食べものの背景に触れる(生産・流通・食文化)」「つくり手に出会う」という食育の観点も大切にしながら体験活動を実施しています。

今年度1年生の活動は「神山まるごと高専」の給食で提供してもらいたいな…という希望を抱いてスタートしました。

食べたい野菜を育てよう!

農体験にご協力いただくのは、松本直也さん・絵美さん。

神山町鬼籠野地区を中心にOrononoという屋号で農業を営まれています。

10月に植えて12月に収穫できそうな野菜をリストアップし、その中から子どもたちが育てたい野菜を選びました。

決まった野菜は、ほうれん草、小松菜、人参、カブ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、じゃがいも(多品目!)。キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーは松本さんが苗を立ててくれることになりました。

種まき前の準備の様子

10月3日 種まきと苗植え

種まき当日。ほうれん草、小松菜、人参、カブの種をまきました。小さな小さな種を小さな穴に入れていくのは集中力が必要。苗は一つずつポットから出し、土に植えていきます。(時間切れで全部の苗を植えられず、残りは2年生に手伝ってもらいました!)

子どもたちに招かれ、校長先生も一緒に種まきをしました。松本さんに教わったばかりの種の蒔き方を、今度は子どもたちが校長先生に伝えています。

11月28日 小松菜、カブ、そしてジャガイモの収穫!

時はめぐって、収穫期。一足早く3品目を収穫しました。

朝から元気いっぱいの子どもたち!葉がぎゅうぎゅうにせめぎ合っている小松菜畑へ移動し、松本さんから収穫の仕方を教えてもらいました。

 さてさて、どうなってるのかなぁ…

わあ〜

茎が傷まないように、大切に収穫していきます。

「食べてみる?」

軸の甘さ、葉の苦み。「おいしい」と言いながら食べる人も、「おいしくない」と言って食べるのをやめる人も、「シャキシャキしている」と食感を楽しむ人も。

続いて、カブ。
国語の学習では「大きなかぶ」が終わった頃でしょうか。

「小さなカブ」が、たくさんとれました。忘れずにお味見も。(みずみずしい…!)

この葉っぱと、向こうの葉っぱ、なぜ違う?

最後は、ジャガイモの収穫です。
実はこの時、一部のジャガイモが病気になり始めていました。土の中のじゃがいもにはまだ影響が出ていませんでしたが、早めに収穫したくて1年生と一緒に掘ることにしました。

「このジャガイモの葉っぱ、見て。向こうまで同じジャガイモなんだけど、ちょっと様子が違う。」

茶色くなってる、枯れてる、と子どもたち。

「茶色くなっているのはなぜだと思う?」

水やりをしていないからかな。
それだと向こうも同じだよ。
肥料をあげていなかったから?
向こうのジャガイモも肥料やってないよ。
お日様が当たっていないからかな。
そうでもなさそう。 

子どもたちはこれまでに見聞きした植物や花、野菜が育つシーンを思い出しながら理由を考えます。

「みんなも風邪をひいたり体調が悪くなること、あるよね。野菜もおなじ。病気になることがあるんよ。だから、元気に育っているかどうか、毎日観察して見てあげる必要がある。」

「葉っぱは病気になっているけど、土の中のジャガイモは、ほら、元気だよ。」

たくさん収穫できました!

収穫した小松菜、カブ、ジャガイモは少しずつ家に持ち帰ってもらいました。野菜づくりのこと、子どもから家庭へ、どんなふうに伝わっているのでしょう。

12月5日 おいしい野菜の秘密をみつけよう!

この日、1年生が松本さんへ「おいしい野菜づくりのひみつ」について話を聞くというので参観させてもらいました。

種まきから8日目、17日目、24日目、50日目…写真を見ながら、先生と子どもたちのやり取りが続きます。

武市先生)
種まきから57日目(前回の収穫日)。ジャガイモの病気の話を聞いたよね。収穫の後は、洗って、食べさせてもらいましたね。そのあとは…

子どもたち)
野菜を持って帰って家族で食べた! おいしく食べた! おいしかったー!(口々に)

子どもたちの「ふしぎなこと」「しつもん」から、「おいしいやさいのひみつ」を探っていきます。

松本直也さん(oronono)

・どうしてジャガイモ、カブ、小松菜は早く収穫できたのですか。
・ジャガイモはなぜ病気にかかるのですか。
・ジャガイモは土の中に埋まっているのに、なぜきれいなのですか。
・トマトは土の上にできるのに、ジャガイモはなぜ根っこ(茎)と一緒に土の下にできるのですか。
・ジャガイモは雪だるまやひょうたんみたいな形があってびっくりしました。カブもいろんな形があってびっくりしました。
・ジャガイモの「タネ」はどうやってできるのですか。

子どもたちの「なぜ?」のおもしろさ!
「なぜ…?」を持ちながら野菜づくりをすると、畑には驚きと発見が詰まっています。観察したり調べたり聞いたりしながら、子どもたちはどんどん世界を広げていくのでしょうね。

最後は、「野菜は人間と同じ。人間もだれかが育ててくれて成長しているから、野菜もだれかが育ててくれておいしい野菜になる」という子どもの言葉で締めくくられました。

この日は神山まるごと高専より新井さん、阪本さんも参観に来ていました。

翌週、収穫した野菜を「まるごと食堂」へ届けて、学生たちと一緒に授業を受ける予定の1年生。スタッフや学生さんへ聞きたいことをお手紙にして渡しました。

「ありがとうございます! 今度、学校で待っています。一緒にすてきな活動をしましょう〜!!」

▶︎ 「神領小学校1年生の野菜づくり_02「まるごと食堂へとどけよう」 へ続く


11月28日 収穫の日
photo: いしはらなつか (神山塾16期生 フォトグラファー)

カテゴリー
レポート小学校

この記事を書いた人:樋口 明日香(ひぐち)

徳島市出身。神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年からフードハブ・プロジェクトに食育係として参画。2022年3月フードハブから独立し、現職。まちの小・中学校、高校、高専の食と農の取り組みにかかわりながら「みんなでつくる学校食」を進行中。 noteでは月1ペースで現在地を発信 ▶︎▶︎ https://note.com/shokuno_edu/