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お米のありがたさを噛み締めるまるごとファームクラブ稲刈り
9月17日(火)に、神山まるごと高専公認の部活「まるごとファームクラブ」で栽培したお米の稲刈りを行いました。昨年に引き続き、二度目の収穫。今回も、町内の田んぼをお借りして、代かき、田植え、草取りをサポートしてもらいながら、無事に稲刈りまで辿り着くことができました。私たちNPOは、ファームクラブの活動をサポートする立場で関わっています。
生え放題の雑草! 稲にそっくりなヒエを見極める
高専は夏休み期間には寮が閉まり、ファームクラブの部員は帰省中。ということで、今回部員で参加できたのは部長のキアさん。そして、神山町で庭師をする佐々木敬太さんがサポートしてくださり、総勢5名での稲刈りとなりました。9月中旬とはいえ、風がなくジリジリと太陽が照りつける日。立っているだけで滝のように汗が流れてくる!
9:00。みんなで鎌を持って、さっそく稲刈りをスタート! すると、雑草がたくさん混じっていることに気がつきます。農薬を使っていないため、雑草もそのまま育ちました。背の低い雑草はともかく、厄介なのが「ヒエ」。「私は稲ですよって顔をしてヒエが生えてるから見逃さないでね!」と佐々木さん。
同じイネ科の植物ということもあり、根本だけ見ていると分からないくらい馴染んでいるヒエ。穂が出てくるまでは稲と見分けがほとんどつかない上に、大きくなると稲に混じって生えてくるため途中で刈り取ることが難しい。 今回の稲刈りでは、私たちはその存在に悩まされました。
ヒエを避けたり、一緒に刈った中からヒエを抜き取りながら稲刈りを進めます。少数精鋭ながら、慣れてくるとヒエも見分けがついてきて、どんどんと刈り取りが進みます。ザクザクと鎌が通る感触が伝わってきて、収穫の手応えを感じました。
里山の原風景「はざかけ」をつくる
1時間ほどで、田んぼの半分ほどが刈り取れました。ここで「そろそろ、稲架(はざ)を作ろうか」と佐々木さん。はざかけとは、刈り取った稲を2週間ほど天日干しにすること。現代では、稲刈りではコンバインを使って刈り取りと脱穀を同時に行い、収穫した籾は乾燥機で水分量を調整します。しかし、コンバインが登場する前は、刈り取った稲を手作業で干して乾燥させていました。
今回はそんな昔ながらの作業を体験! 土台を作るには、まずは大きな木を合掌型に組み、一本ずつ打ち込んでいきます。キアさんが押さえる係をして、佐々木さんが打ち込んでいきます。
稲架が完成したら、稲の束をかけていきます。かけるときは、束同士に適度な隙間を生むために同じ方向に重ねていきます。
この稲の束を作るのも意外と難しい! 佐々木さんは「神山の農家さんはクルッと美しく一瞬でやるよ」とお手本をキアさんに見せながら話してくれました。お手本を真似してみるも、解けてうまくいきません。時間の積み重ねから生まれる職人技に頭が下がりました。
14:00頃まで作業を続け、はざかけも完了! その後、9月23日(月)に脱穀をしました。ちなみにこれだけの時間を使って収穫して、籾で33kg。白米にすると半分ほどの重さになるため、15kgほど。
これらでどれくらいの食がまかなえるか考えてみましょう。1合が白米150gで、1食はおよそ0.5合としたら1食は白米75gで、つまり白米15kgは200食分です。家族4人で朝夕お米を食べるとしたら、25日分。一人暮らしで夕食だけお米を食べるとしたら、200日分。一人で生きていく分には1年間弱の米は確保できるけれど、家族4人が食べるには全然足りない量です。
それにしても、苗植えや田植え、水の管理など、収穫を迎えるまでにも膨大な時間がかかっている。食べるものを作ることがどれほど大変で尊い仕事なのかが身に染みました。
米の不足や値段高騰のニュースが飛び交っていますが、消費者視点だけでなく、生産者の目線からもこのことを考えるきっかけになりました。米が手に入らなくなると困るとはいえ、こんなにも重要な仕事をしてくださっている生産者さんたちに皺寄せがいってはならない。持続可能な農業のあり方や、私たちの食生活のあり方についてもっと学びたくなる一日でした。
まるごとファームクラブ 部長 キアさんより
今年度は、畑の状態や私たちの向き合い方によって、多くのヒエが生えてしまいましたが、地域の皆さんや食農NPOの方々のサポートのおかげで、無事にお米を収穫することができました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。また、今年は新たに後輩たちも部活動に参加し、これまで自然にあまり触れてこなかった学生も、田植えなどの体験を通じて、生産者の視点から多くの学びを得ることができました。来年度も引き続き、農業とどう向き合うかを考えながら、神山町での農業を続けていきたいと思っています。