 活動日誌Monthly News
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            「毎日よく観察する」町内小学校5年生の田植え

2025年4月にNPO法人まちの食農教育「(以下、食農NPO)に参画した植田彰弘と申します。
神山町で暮らし始めて13年目を迎え、仲間と共に棚田の保全活動(エタノホ)に携わりながら稲作を続けています。新しい環境で目まぐるしく過ぎ去る日々の中、今年新しくチャレンジする「お米づくり」が始まりました。私が現場で大切にしていきたい「小さな変化に気づく・触れる」視点をお米づくりの活動を通じてレポートしていきます。
小さな変化に気づく

目を凝らすと、毎日小さな変化が転がっているがわかる
大人(40代)になっても、新しい発見にはドキドキ・ワクワクします。私にとって「発見が楽しい!」と思える原体験は、神山町でお米づくりに携わるようになってから。「発見や気づき」が新しい世界を見せてくれる喜びは、ずっと持ち続けたいものです。
お米づくりは「88の手間」がかかると言われるぐらい、毎日の小さな変化に気づき、対応できる解像度が求められます。「稲の葉色・田んぼの水温・日々の気温・病虫害・周辺環境の変化(獣害)」など、気に掛ける視点を持って田んぼに出向くことが多い。「観察」は、小さな変化に辿り着く学びの蓄積でもあり、知らなかった物事を出会う素敵な機会です。
新しいチャレンジ!お米づくりが身近な存在に
神山町では白桃農園さんが20年以上前から小学生向けに「もち米づくり」の体験学習を続けています。白桃家で80年以上受け継がれてきた通称「よごれもち」という神山町の在来種を用いてきました。
2025年から食農NPOがこの取り組みを段階的に受け継いでいく運びとなり、今年はその引き継ぎの年となります。これまでは作業の大部分を白桃農園さんにお願いしてきましたが、少しずつその経験をお預かりし実践の場を整えていきます。その一つとして、苗代の管理を始めました。
もち米づくりでは、主に「もみまき→田植え→稲刈り」と年3回の体験学習が主流です。
※苗代(なわしろ)・・・田植えの前に稲の苗を育てるための場所。今年は「トンネル苗代」の方法で苗立て。
・苗が育っていく小さな変化を毎日見られる環境にしたい
・小学校で育苗できると面白いかも!
・毎日見に来られる環境があると、気にかけてくれる子が出てくるかな?
そんな想いや願いを叶えてくださったのが神領小学校の先生方でした(本当にありがとうございます!)
この春、初めて学校の一角に苗代ができました!

場所が変わることによって、苗の生育の様子も変わってきます。その小さな変化を見逃すことなく、今年は苗代に毎日通い続けました。私たちは「農薬や化学肥料を使わない」(これも後日お伝えしたい)という選択をし、育苗に挑んでます。
しかし今年は病気が蔓延し、1回限り農薬使用に至りました。

今年、塩水選で種もみを選別した結果、求めていた品質に届かない種もみが多くありました。田植えに必要なもみの量に届かず、半分近くは選別外の種を使ってしまったことも起因しているかと推測できます。
※種もみ・・・稲作の基となるお米の種子のことを指す。
一方で、病気も学び。前途、農薬や化学肥料を使用し病気を発生させない育苗を伝えていくよりも、自然の中でどんな変化を遂げながら苗の成長を観察できるかも苗代で学べる大切な視点。子どもたちとどんな変化を観察し、学びに繋げられるか。この視点は大切に育んでいきたいと感じる機会となりました。
10日間、苗を育ててみる

学校で苗代をつくっても、子どもたちが「毎日」観察することはどうしても難しい。
授業の合間や放課後に「お米どうなった?元気に育ってる?」と気にかけてくれる子が出始めて、「今日は色が濃くなった」「身長が伸びた気がする」「あんまり変わってないように見える」など、少しずつ5年生から見える苗の変化を伝えてくれる機会が増えてきました。
育苗は約25日。子どもたちが観察できる機会はそのうちの約20日間。
育苗も後半戦に差し掛かった15日目。2校の小学校に1箱ずつ苗箱を預け、最後の10日間お世話をお願いしました。水のあげ方・水量・どんな環境下が適しているか・適してないか。土日挟む場合どう管理するか。最低限の情報だけをお伝えし、「田植え当日にみんなで持ってきてね!」と約束して管理が始まりました。

田植え当日、苗の状態は…?
迎えた6月5日田植え当日。育苗から25日目に合計21箱(うち2箱は小学校で管理してもらったもの)の苗箱が揃いました。
途中「ごま葉枯れ病」が蔓延しましたが、どうにか持ち堪えてくれ上々の苗を田んぼに届けられ一安心。
さて、子どもたちにお任せした苗はどうなったでしょう…↓↓

結果は、水分が足りず萎れている苗が多く見られました。
しかし、これは失敗ではありません。
・十分だと思っていた水分が全然足りてなかった。
・同じ苗でも、管理が違うと結果が変わる
・変化の違いを受け止める目を養う
「違う」に触れると、たくさんの発見に繋がりますよね。農体験はどうしても成功事例を求めることが多いなかで、このように目の前の事象をどう感じるか。その意識を養うことが野菜や穀物をきれいに育てるよりも大切な学びだと考えています。
萎れてしまった苗も、ここで終わりではありません。
数株、植え付けしても大丈夫な苗を選別し、実験的に植えてみました。収穫は10月上旬を予定。
果たして、穂が実るのか今から楽しみです!
